
国会議事堂を中心に、日常的に日本の命運を決めるような活動をしている政治家たちの実像を、政治記者60年の眼から見て、語った「権力の真実」である。著者は、読売新聞政治部記者として、過去60年間、権力の中枢を見て、書いてきた人で、かの渡邊恒雄元主筆の後を継いでいま読売新聞主筆になっている人だ。
実に面白くためになる内容であり、権力の強さと人間の弱さを引き立たせる実話で埋め尽くされている。自民党の佐藤政権から高市政権までの歴史的出来事を整理しながら、首相の座に座った人物の評定と賞賛と打算と反省点がほどよく織り込まれている。振り返れば誰もが思い出すあのシーンと動作と表情まで彷彿とさせる筆致だけでなく、内外の歴史的な著作を引き合いに出しながら権力者の思考と過ちを示唆している点で他の政治評論とは格が違うように思った。
圧巻は、最終第3章の「引き際を誤らせる『権力の蜜と毒』」である。この著者には、政治家を取り巻く権謀術数や運と誤算などを語った多くの優れた政治評論集があるが、今回はこの章を書くために筆を起こしたのではないかと思わせる力作である。
自民党政権運営は、「数とカネ」がモノを言う政治であるがため、カネの処理には苦労をしてきた。クリーンな金集めとして政治資金パーティにたどり着いたのはいいが、今度はカネを生み出すところではなく、カネを処理する政治家のルーズさと無責任をだらしなくさらけ出したと指摘する。党組織の劣化である。
かつて派閥の領袖がカネを集めて、配下の陣笠議員に配った時代からクリーンな金集めに様変わりしたら、別次元の問題が露呈してきた。それが党の組織として起きてきたところに、時代の変遷を感じさせるという。
先の総選挙で「バカ勝ち」した高市政権だが、著者は、2024年秋の衆院選、25年の東京都議選と参院選で「自民党に3連敗をもたらしたのと同じ現象が、今度は裏返しの形で自民党に有利に作用したと、私には見える」(本書211ページ)とし、これを「有権者の投票行動の流動化である」(同ページ)としている。
高市政権の誕生と衆院選の地滑り的勝利には、運と時代の趨勢という見えないファクターが後押ししたと筆者は見ているが、そうした観点についても著者はいくつか示唆しながら、最後は権力者の自制心を強く説いて締めくくっている。
かつて体験したことがない圧倒的勝利と、初の女性宰相という歴史の折り目がどのように展開されていくのか。国民は見守るほかないが、著者は「おわりに」の中で「有権者の側も政治を冷笑したり不満をぶっつけたりするだけでなく、国のカジ取りを誰に、どの政党に託すかを誤りなく判断することが、ひときわ大事になった」(219ページ)との警句で結んでいる。


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