「多数決」と「拙速」で押し切った皇室典範改正

時事評論

 国会で改正皇室典範が賛成多数で成立した。政府は、皇族数の減少は待ったなしであり、皇室制度の安定維持のため早急な法整備が必要だとして改正を進めた。しかし、それでもなお筆者は、拙速であったと思う。

 改正典範は、①皇族数確保のため、皇族との養子縁組による旧宮家の男系男子の皇籍復帰が可能、②女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持し続ける、という2つの柱で構成されている。しかし今回の改正の過程では、重要な案件について本格的な議論をしなった。

 2005年、小泉政権下の有識者会議では、①皇族の復帰は国民の理解と支持の面できわめて重要、②女性・女系天皇の道を開くこと、の2つを提案していた。しかし、この両方とも十分な国会審議を尽くすことなく、改正案が成立した。

 欧州王室では、男女を問わない継承制度へ移行する例が増えている。一方、日本では、男系継承を維持している。皇位と皇族の継承の最重要原則を「男系継承」としているだけでは、現代の社会通念上の価値観と隔たりがあるように見える。

 生物学的に言えば、男性の遺伝子半分と女性の遺伝子半分が合体して子が生まれる。子の男女の性別は、公平に両親の遺伝子の半分が引き継がれた結果、決定される。現代の生命科学の視点から見れば、男女決定に置ける遺伝子継承に本質的な差はない。この科学的知見をどう制度論に位置付けるかも、十分な議論が必要である。愛子様は、天皇陛下の遺伝子の半分を継承している。この科学的事実を皇位継承制度の議論の中でどう考えるのかも、本来、静かに検討されるべき論点である。

 皇室は一内閣、一政党、一時代のものではない。百年先の日本人からも納得される制度であるべきだ。政治に求められている姿勢は、多数決の原理ではない。私は半世紀以上、政治と行政の現場を取材してきた。その経験から言えば、国家の基本制度であればあるほど、多数決に至るまでに十分な熟議と国民的合意形成を尽くすことが政治の責務である。

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