<第54話>激減した北海道の交通事故死

記者馬場錬成一代記

  70年代は北海道の交通事故全国一が突っ走る

 下の表を見て欲しい。上が70年代の10年間の都道府県別交通事故死者数の累計ワースト10である。続いて掲出した表は、直近10年間(2016年~25年)の累計死者数のワースト10である。

 死者数トップの北海道が5位に後退し、代わって愛知県がワースト1に躍り出ている。車社会の到来を牽引したトヨタの「城下町」ともいわれてきた愛知県の汚名トップには、驚かされた。

  表ばかり多くて恐縮だが、この50年でどのくらい減ったのか。順位はどうなったのかを見るには表が分かりやすいと思い、以下に掲出した。

 70年代から日本は、急速に車時代へと走り始めた。それと並行して交通事故死者数も増えそうに思っていたが、現実には劇的に減少していく。今回の一代記の中で、「突っ走る死」という連載を取り上げるまで、筆者は気が付いていなかった。

 全国的には、どのくらい減ったのか

 全国死者数は1970年の16,765人から1979年には8,466人とほぼ半減している。さらに2025年の全国の交通事故死者数は2,547人となり、1970年の15%に激減している。警察庁の年間統計が残る1948年以降で過去最少となった。

 都道府県別減少率で北海道がトップに

 都道府県別に減少率を調べてみると、下の表のように70年代から直近10年までの減少率を出してみた。なんと北海道が減少率78.6%でトップになっている。

  これは驚きだった。減少は全国一律で減少しているのだが、その中でも北海道が抜き出て減少したのである。何がどうしてこうなったのか、探ってみるとつぎのような理由が出てきた。

 北海道を分析してみると、片側一車線で正面衝突することで死者数を増やしていたが、中央分離帯を作るなど正面衝突を避ける対策を広げ、道路の整備も積み上げていった。救急医療で助かる命を極力救う体制に整備していった。

 さらにドライバーの酒酔い、信号無視、運転マナーの悪さを解消する対策に注力し、交通取締り一辺倒ではなく面対策、広く交通行政の効果を期待した対策に取り組み、事故死減少につながっていった。これが北海道だけでなく、全国的に皆同じ傾向で減少に転じたことは、日本の交通行政が大きな成果を上げたことになる。

 人間の行動を取締りだけで変えることには、限界があることを示したのではないか。制度、道路、技術、教育、医療を同時に改善していけば、人間の行動そのものも変わっていく。結果として社会全体を変えることができたと見てもいいのではないか。

 1973年に北海道版で連載した「突っ走る死」の最終回で筆者は、「モラル向上こそ-マトはずれの取り締まり主義」という見出しを掲げて締めくくった。警視庁の津田武徳交通部長の「交通取締のためだけの取り締まりはしません」とのコメントも付けていた。そうした思想が50年間の交通行政が着実に効果を上げて実証してくれた。

 行政がしっかりすれば、国民も相応に答えてくれるという例として、この事実は素晴らしいと思う。筆者が警告したから行政が取り組んだと言いたいところだが、実際には違う。行政はそれほど安易ではないことを記者活動50年を通して骨の髄までしみこんでいる。

 政治と行政がしっかりすれば、国家としてそれなりのたたずまいに変貌していく好例だろう。警察庁と交通行政に敬意を表してこの項を結びたい。

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