<第20話>事前予測を破壊させた自民の地滑り的大勝

 過去の体験を超える予測数値と結果

 大きな賭けに出た高市早苗首相の衆議院解散 総選挙は、自民党の歴史的大勝に終わり、海外でも地滑り的勝利(landscape victory)と報じられた。事前に支持政党、候補者を世論調査して報道したメディア各社の予想を、遥かに超える自民の大勝利と革新中道の大惨敗の結果となった。

 この表の上部にあるメディア各社の党派別当選者の予測数字は、報道された内容から筆者が推測して出した数字である。かつて国政選挙の統計予測を手がけた体験、衆院選などで実際に選挙区の担当になって事前調査の数値と選挙区の情勢を取材して予測記事を書いた体験などから、各社の報道記事を読み込んで出した数字である。

 表の下に投票結果を各党別に出してみた。これを見ると、明らかに予測数字が大きくぶれていることが分かる。

 * 自民党がメディア予測数字を大きく上回る当選者を出している。

 * 維新・国民民主・参政が、予測数字をやや上回る当選者数になっている。

 * 中道改革連合が予測を大きく下回る歴史的な惨敗になり、共産・令和も弱小政党に転落した。

 これは、事前の選挙予測を破壊する出来事であり、今後の調査報道に課題を残した。

 過去の事前予測の真逆になった開票結果

 前2回(第18話、同19話)にわたって、筆者が体験した国政選挙の事前調査から選挙結果を予測する方式について書いてきた。しかし今回の予想と結果は、過去の体験・方式に合わないものであり、今後の事前予測とその報道をどうするか、悩ましいことになるだろう。

 どの党派を支持するか、どの候補に投票するかを有権者に聞いた結果は、筆者が深く関わった1970年代の選挙では明確な特徴があった。その特徴を書くと次のようになる。

 * 自民党は、調査結果の支持率が、実際の支持率より高めにでる。

 * 革新政党〔当時の社会党、民社党、公明党、共産党など)は、実際の支持率より低くでる。

 これが大まかな傾向だった。

 筆者は、1960年代の衆議院選挙の全129選挙区(定員467人)の全立候補者について、実際の得票率と事前予測数値(支持率)から統計的にどのくらい乖離しているかを計算で出し、次の選挙予測にこれを当てはめて予想した。筆者は基礎的な計算数字を出しただけで、統計処理は青山博次郎・文部省統計数理研究所第3部長が取り組んだものだった。各候補者だけでなく、各政党の支持率も出し、全体の当選者を推計して事前予測の有力な根拠として使っていた。

 50年以上も前の選挙予測調査の動態だったが、自民が強く出て革新が弱く出るのは、つい最近まで通説になっていた。特に共産、公明党はいつでも事前調査では実際の投票よりも小さくでる。これは支持者の多くが本意を隠すからとされていた。

 今回の結果を見ると、自民は予測数字を大きく上回った。維新・参政も上積みした。それに対し、中道改革連合は公示前の167議席の約3割、49議席に落ち込んだ。かつての予測数字と選挙結果の状況とは逆の様相を呈したことになる。これは大異変である。

 18~28歳までの若年層は、自民支持が高くなり、無党派層の多くが自民党に回った結果が報道されている。これもまた過去の傾向とは逆の傾向になっている。時代と共に、国民の考え方価値観、生き方が激変し、加えてIT・AI産業革命によって、情報の発信と拡散が拡大して迅速性を増しており、投票行動が変わってきた。

 これまで蓄積された事前予測の統計手法が、役に立たなかった。むしろ調査で出てきたナマの数字が正しい実態を表していた。そういうことになるのではないか。調査する母集団が変革してきたので、ここでそれに見合った統計手法を急いで確立する必要が迫られている。筆者は、そう考えた。

 投票率の低いのも日本の特徴

 ところで国政・大統領選挙など世界の主要国の投票率を調べてみると日本は低い。この表はAI(ChatGPT)が出したものに、筆者らが調べた数字も参考にして作成した。

選挙投票率(直近/代表)
日本衆議院選挙今回衆院選速報値55.7%
アメリカ大統領選挙64〜65%
イギリス下院選挙59.7%
ドイツ連邦議会選挙82.5%
フランス大統領選/議会選72〜74% / 約66%
韓国大統領選79%

 備考 国によって 選挙制度・登録方法・投票日の扱い が異なるため、単純比較には注意が必要です(登録者基準か有権者基準かなど)。欧州や韓国では義務投票や文化的要因で高い投票率が出る傾向がある。

 これで見るように、日本は国政レベルの選挙での投票率が他国に比べて低い。これが最大の問題ではないだろうか。国民の大半が選挙に参加し、主権者としての役割をきちんと果たさない限り、政治はまともな形にはならない。今回の選挙結果は、筆者の考えでは一過性のブームであり、必ず反動が来ると強く思っている。過去の選挙がそうだった。

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