ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2(新潮文庫) ブレイディみかこ著

本の紹介

2019年に刊行された『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、本屋大賞や毎日出版文化賞特別賞など、さまざまな賞を総ナメにしたベストセラー。

著者のブレイディみかこは、イギリス在住の日本女性。
アイルランド人の男性と結婚して、ブライトンという海辺の街に暮らし、低所得者向けの保育園で保母をしている。
底辺から見たイギリス社会を描くことには定評がある。

今回はベストセラー作の第二弾で、いずれもブレイディの息子が主人公。
題名の「僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー」は、小学生の息子がノートの端に書いたメモから取られた。
日本人の母とアイルランド人の父を持つから「イエローでホワイト」、そしてそれに伴う数々の悩み事で「ちょっとブルー」だと。

1作目は、優等生の集まるカトリックの小学校から近所の底辺中学校に進んだ理由、「他人の靴を履く」というエンパシーの概念の描写などが、鮮やかな筆致で書かれた。

第二弾では、息子も育って中学2年生。
バンド活動に精を出しているが、親友のティムは周りとの格差を感じてバンドを辞めてしまう。
その肩を持った息子も、バンドから除け者にされて…

とか、宇多田ヒカルが「私ってそれだ」と呟いて有名になった「ノンバイナリー(性をどちらかに決めない(人))」の扱い。
(父はうまく理解できなくて息子を質問攻めにしている)

ブレグジットに伴う大人の社会の分裂と、それを冷静に見つめる息子のまなざし。

生まれてからずっと公営住宅に住み続けていた隣家の母親が、子供たちのために家を売って田舎に引っ越したが、うまく馴染めず近所に戻ってウロウロしてしまう話。

様々に切なくて、引き裂かれる英国の悲哀をひしひしと感じてしまった。

ブレイディの筆は、前作より鈍い。
それは息子が育っていって、簡単には割り切れない複雑な年齢を迎えているせいなのか、それとも本人の精神状態の問題なのか。

文中に、彼女自身の母親の話が出てくる。
福岡で、もう20年くらい鬱病を病み、ほとんど奥の部屋で寝ていて、時々トイレに起きたついでに立ったまま食物をむさぼり食う。

幼い頃から父は土方で、母も精神的に不安定、貧乏人は起きていてもいいことなんかない、と、家ではほとんど寝ている…というような両親から生まれた、超過敏な感性と鋭い知性を持った娘。

本来はお金がなくて高校にも行けなかったはずなのに、先生たちの推薦で奨学金を受けて進学したが、定期代を稼ぐためにしていたバイトが咎められ、理由を訴えても、「そんな貧乏な家は日本には存在しない」と、取り合ってもらえなかった。

そのようなブレイディが、アイルランドからの移民と結婚して、息子と共に暮らす街がブライトン。
周りが全て保守党支持なのに、ブライトンだけが労働党支持という、リベラル色の強い街。

この連載はまだまだ続きそう。
息子は時々、すごくいいことを言って母を唸らせるので(私も)、その成長を見守りたい。

次回作で、ブレイディの新たな輝きが見たいと思う。(千)

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